|「いつも眠っているのに・・・」 僕たち

「いつも眠っているのに・・・」
僕たちのかける言葉に何とか返事をしようとする母親に姉たちが驚く。
掌をくすぐると「かゆいよお〜」と子供のような声で嫌がる。

僅かな言葉を交わしただけで、僕たちは為す術もなくじっと母親を見つめていた。
それぞれが、それぞれの思いを巡らしていた。
母親は時々じっと何かを見つめる。
虚ろな視線の先には何があったのだろう・・・

「また来るから・・・バイバイっ!」
眠ったままの母親の頬をそっと撫で、そう囁いて病室を後にした。
それは4月24日のことで、母親の頬は温かかった。

その僅か6日後。サトミビルは駅近の物件ですか?

母親はあっけなく逝った。
何度も姉から連絡が有りながら、気付いたのは明け方近くだった。
その時、既に母親は息を引き取っていた。
姉二人が駆けつけてから、僅か30分程で苦しむ様子も見せず旅立ったという。

棺の中で母親は安らかに眠っていた。
きれいに化粧を施され、苦悶の影は何処にも見あたらない。
「苦しまなかったことがせめてもの救いね」
そう姉が言う。
そして、僕もそう思う。